恵文社一乗寺店ウェブサイト
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「いちじょうじ人間山脈」
題字:関美穂子
2009年4月23日取材 インタビュー/原稿/写真:堀部篤史
今回より始まりました新連載。一乗寺周辺のお店をご紹介した「お店探訪」に引き続き、今度は「人」を探訪いたします。個性豊かな作家さん、アーティスト、取引先の皆さんと毎日のように関わりながら成り立っている当店。そんな人々を探れば自ずと店の輪郭までもが浮かび上がるのではないでしょうか。栄えある第一回はミュージシャン、DJとして活躍されながら、音楽だけにとらわれない幅広い活動内容とセンスが多方面より注目を集めるキュビズモ・グラフィコこと松田岳二さん。書店である当店との関わりを不思議に思う方も多いかもしれませんが、意外にその関係は深く長いものでした。
―そもそもウチの店との関わりってどこから始まったのでしょうか?
99年くらいからかな。京都に隔月くらいの割合でイベントに来ていた頃があって、その頃はゼストの京都店*1とか、ジャケット・デザインをお願いしていたPAT*2の事務所もあったし、時間も余裕のある時期だったから来るたびに何泊もしてた。その頃に恵文社を知ったんだけど、当時自分もヨーロッパに買付け*3とか行ってビジュアルブックとかに興味がある頃だったから、独自のセレクトが新鮮に思えて、それから通うようになった。最近はちゃんと本読むようになってきたから、また別の面で面白いんだけど。
―最初の展覧会ってどういう経緯でしたっけ?
あれは2003年*4とかだったかな。もちろんギャラリー借りて何かするっていうこと自体初めてだった。東京でやる度胸がないっていうのもあったけど、京都の雰囲気とか恵文社が実験をやれる場所に感じたんだよね。一回目はグループ展で、僕は人を集めてディレクションしているような立場。自分ではコラージュとかキュビのジャケットの色校とか元原稿を出したりしてた。2回目が3年前*5で、そのときは今まで作ってきたTシャツの展示。
―今回の展示のコンセプトは?
なんだろうね。基本的にはパンクなんだけどね。ニュースでヨーロッパのデモとか見てると、その人たちが持ってるプラカードとかすごいかっこよかったりして、それを作品として作って見せたら面白いかなと思ったのがきっかけ。ポリティカルなメッセージもあるんだけどポップにすれば伝わりやすいと思うし、日本は政治運動においてはすごいおくれてるから、こういう軽い形でもいいからみんなに手に取ってもらって考えるきっかけになればいいなと。本物のデモとかのプラカードとか僕に発注があると嬉しいんだけどね。
山口瞳『卑怯者の弁』
―座右の一冊を教えて下さい。
山口瞳の『卑怯者の弁』*6。もともと伊丹十三を周りのみんなが読んでる時期があって、自分も読んでみたら面白いし、その師匠という事で山口瞳にたどり着いた。小説を読むのがちょっと苦手だから、その人を知れるようなエッセイとかに興味があって、向田邦子なんかも好きなんだけど、小説よりも随筆とか向田邦子を語った本を読むことが多いかな。
*1 渋谷に本店があった今はなき輸入レコード・ショップ。
*2 PAT DETECTIVE。京都を中心に活動したデザイン事務所。
*3 所属レーベル、エスカレーターのショップのためにレコードや本を買い付けされていました。
*4 「ismo!」2003年6月開催。
*5 「ismo#2 CUBISMO GRAFICO T-SHIRTS EXIBITION 」 2006.8.29-9.4
*6 新潮社刊 現在絶版