第七回 梢夏子さん(ペインター/フードコーディネーター)

2010年1月14日取材 インタビュー/原稿/写真:椹木知佳子

梢夏子さん

個性豊かな作家さん、アーティスト、取引先の皆さんと毎日のように関わりながら成り立っている当店。そんな人々を探れば自ずと店の輪郭までもが浮かび上がるのではないかということで、スタートしました連載「いちじょうじ 人間山脈」。

第七回は当店の近所にお住いの梢夏子さん。芸大で日本画を学び、卒業して一番最初の個展はギャラリーアンフェールの「鴨川採集」でした。2009年12月には関美穂子さんとの二人展「襖とスカート」も開催しました。最近は型染めの技法も使いながら布小物やペーパーアイテムを作り、フードコーディネーターとしてケータリングユニット「茶水」*1の活動も。茶水メンバーの小鹿さん、有機野菜農業グループ 「オーハラーボ」*2の渡辺民さんも交えて、お茶会をしつつお話をうかがいました。


―梢さんの肩書は絵描きさんですよね。いつから活動しているのですか?

ペインターとフードコーディネーターです。展示会は学生時代から大学内で展示したりしていましたが、ギャラリーでの個展はアンフェールでの「鴨川採集」が初めてです。

―覚えてます。5年ぐらい前ですが、素人ながら上手いなあと記憶に残ってました。

あとは知り合いが美容院のbizou*3で店内に絵を展示する人を探しているからということで紹介していただき、それがご縁で展示会をしたりショップカードをデザインしたりするようになりました。学生時代からだからもう5年ぐらい。こんなに長い付き合いになるとは思っていませんでしたね。その時にちょうど何かやりたいと思っていて、bizouさんに相談したら色々やらせてもらえて。あとは大阪のitohen*4でも何度かしています。そこで展示をしたということが、ちゃんと記録に残るかどうかという事を大事に考えてます。

―最近はイラストレーションだけではなく、型染めの作品も制作されていますが、これは量産するという意図もあってのことですか?

そうですね。学生の時に実習で一度したことがあったのですが、関さんにおさらいで教えていただいて。以前は会社勤めをしていたという事もあり、作品を雑貨として販売することに意識が向いていなかったのですが、小さいものも作品になるわけだし。料理を始めたのもそうなんですが、自分の生活の中に自分の作ったものがあるというのは、豊かな事だなあと思って、それで作るようになったというのもありますね。

―料理はもともと好きでしたか?

一人暮らしをしたのが始まりです。学生時代から舞台のボランティアをしていて、週に一度のミーティングで作ったお菓子を差し入れしていたのですが、それが美味しいという声もあり、調子に乗ったんです(笑)。ちょうど、茶水の小鹿さんがそのメンバーにいて、茶水を立ち上げるというので、私も参加させてもらうことになりました。

―どんな活動をしているんでしょうか。

最初は劇団のスタッフとか参加者にケータリングをしていました。舞台をやる人のお弁当って冷たいんですね。やっぱりあたたかいお弁当が食べたいとか、栄養のバランスが良いものを食べたいという声があって。やはり良い作品は食生活から、ということでやり始めました。そのうち劇場のロビーとかで一般のお客様向けにお茶やお菓子を売るようになったんです。去年はフードコーディネーターの資格もとりました。食を提供する立場ですが、制作するとういかものをデザインするように活動していきたいと思ってます。

―ありがとうございます。座右の書をご紹介ください。

10年ぐらい前に読んだのですが、お茶というものを通して技術だけでなく、おもてなしやしつらいといった、総合的な空間の芸術について哲学的に書かれている本です。自分のやろうとしている生活の中の芸術とはこれだと思い、とても共感しました。今読み返しても、10年前と変わらない気持ちです。いま絵をかいたり、型染めしたり、雑貨をつくったり、ケータリングもしたりして、本当にいろいろなことをしているので、時々気持ちがブレるんです。でもやっぱり全て同じ心持ちで取り組んでいるし、いつかひとつの表現の塊になればいいなと思ってます。

毎月第四月曜日、10時〜13時までアトリエ劇研の前で「やさい市」を開催しています。梢さんも「茶水」として喫茶を毎月出店されています。大原で有機野菜やお米づくりを行う、「オーハラーボ」の野菜も販売もありますのでお近くの方はぜひ!
・アトリエ劇研 やさい市:http://yasaichi.exblog.jp/

恵文社一乗寺店オンラインショップ取扱い商品はこちらからどうぞ。

*1 表現活動の裏方として食をとどけるまかないユニット。農家や独自の食材ルートをいかし、表現活動の舞台裏で活動をしている。農と芸術を暮らしの軸に置く生活をにわかに提唱。メンバーはデザイナー、農家、アーティスト、企画者など。
http://chasui.exblog.jp/

*2 京都・大原で有機野菜や米づくりを行う農家集団。つくだ農園、藤柳、おとふくばたけ、サトリキ農園、オーガニックファームこうや、わっぱ堂の6農家で構成される。全員が畑違いの経歴を持ち、農業を軸にさまざまな分野や人との出会いを紡いでいる。
https://www.kyoto-ohara-kankou-sns.jp/u/satonoeki/WAM0ZBcvHklhnFoOjbI3/

*3 京都市岡崎にある人気の美容院。梢夏子さん、関美穂子さんが展示をしたりオリジナルグッズを制作したりしている。常連には面白い人がたくさん。
http://www.geocities.jp/bizou_web/

*4 大阪、中崎町にあるギャラリーブックカフェ。梢夏子さん他、当店にゆかりのある作家さんも展示をされている方多し。カフェもあり、ゆっくりアートを楽しめる空間。
http://www.skky.info/