恵文社一乗寺店ウェブサイト
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「いちじょうじ人間山脈」
題字:関美穂子
2010年3月11日取材 インタビュー/原稿/写真:堀部篤史
個性豊かな作家さん、アーティスト、取引先の皆さんと毎日のように関わりながら成り立っている当店。そんな人々を探れば自ずと店の輪郭までもが浮かび上がるのではないかということで、スタートしました連載「いちじょうじ 人間山脈」。
今回は書店とは切っても切れない関係である本の作り手側、編集者さんにご登場願いました。昨年惜しまれつつ休刊した情報誌『エルマガジン』の元編集スタッフであり、現在はエルマガジン社書籍部に在籍しながら同社の新機軸を模索される敏腕エディター、稲盛有紀子さんです。現在鋭意編集中だというレシピ本の著者である木村緑さんのお店、大阪新町の「room cafe ロカ」さんでお話を伺いました。―ウチの店に最初に取材に来られたのって、いつ頃でしたっけ?
エルマガジンで何度か書店特集をしたんだけど、2004年の11月号で色んな人に恵文社さんで1万円分本を買ってもらうっていう特集企画があって、そのコーディネートをしたときに伺ったのが仕事としては最初じゃないかな。出所後の横山ノックさんとか、ミュージシャンの小島麻由美さんとか。私はタム*1くんを京都駅まで迎えに行って、案内した記憶があるな。あとは、本棚通信という連載ページも担当していたから、『AHO AHO EXPO』展にあわせて打ち合わせ風景を取材したり。最初は堀部さんすごい感じ悪かったよね(笑)。
―すみません(苦笑)、取材受けているときは目が死んでいるとよく言われます。エルマガジンが休刊した後、書籍部への異動はすんなりと?
休刊と同時に辞めていった人も多いし、私も迷ったことはあったんだけど、当時小規模に動いていた書籍部のスタッフがすごく良い人で、信頼もしていたので、この人とならと意を決して残りました。今も少人数で動いているんだけど、雑誌の頃と比べて刊行ペースも穏やかだから随分生活のリズムは変わりましたね。今みたいに入稿間近だと徹夜続きになったり、仕事が一段落したらまとめて休んだりと変則的。編集の仕事って手を抜こうとすればいくらでも抜けるけど、私は要領が悪かったり、性格的に手が抜けないところがあるので、やるときはとことんやります。今作っているこのお店のレシピ本*2でも実際に家で試作を繰り返してみて、不具合がないかしつこく確認したり。
―資料もすごい買うもんね、領収証切らずに・・。最近のお仕事を紹介してほしいんですけど。
もうすぐ発売するのがこの『あんこの本』*3。もともとあんこ嫌いだった著者が、美味しいあんこに出会ってから、目覚めてゆく遍歴が綴られているから、紹介しているお店も京都を出発点に全国まで広がってます。「あんこ」だけに絞った本っていうのはいままでほとんどなかったから、好きな方には楽しんでもらえるんじゃないでしょうか。あと自分の仕事の中でもエポックになったのが昨年刊行した太田和彦さんの『ひとり旅 ひとり酒』。太田さんは取材先でもきっちり食事して、お酒も本当にたくさん呑むから信頼できる。私もよくご同行させていただき、同じペースで呑むもんだから生まれて初めて記憶を失ったり帰宅後に吐いたり、いろいろと開眼しました(笑)。
―今ではすっかり呑みが最大の娯楽ですもんね。最後に座右の書を一冊ご紹介下さい。
恥ずかしいんですけど、これ*4。自分の地元の富山って本当に何もないと、多感な当時の私は思っていて…。中学くらいのときに古本で購入したんですけど、世の中にはこんなに知らない事がたくさんあるんだって、夢中になって。博物学的なものが好きって言う自分のルーツでもあるし、雑誌的な編集がなされていて、今の仕事にも何となく繋がっている。よくよく読んでるとかなり悪趣味で、バカバカしいテイストが盛り込まれていたり読み飽きない1冊ですね。
店長の呑み仲間でもある稲盛さん、この後もハシゴ酒と四方山話は尽きず・・。本文中にも登場する刊行を控えた2冊の単行本の他、今年6月にエルマガジン社ウェブサイト上で、私店長の新連載もスタートします。もちろん稲盛さんにご担当頂きますので乞うご期待。