第二十回 和山弘子さん(SWISH!、ニット作家)

2010年12月22日取材 インタビュー/原稿/写真:椹木知佳子

和山弘子さん

個性豊かな作家さん、アーティスト、取引先の皆さんと毎日のように関わりながら成り立っている当店。そんな人々を探れば自ずと店の輪郭までもが浮かび上がるのではないかということで、スタートしました連載「いちじょうじ 人間山脈」。

生活館がスタートしてから毎年のように指なしミトン、ネックウォーマーを届けてくれるSWISH!こと和山弘子さん。ブランドの定番は毎年柄が変わります。2つ3つとお持ちの方も多いのでは。制作について初めてお話をうかがいました。

―私が声をかけたのは、店長から知り合いにこういうの作ってる人がいるよって教えてもらってからなんですが、スタッフの個人的交友関係から生活館のお仕事を依頼するのは初めてでした。そもそも店長とはどういうお知り合いだったんでしょうか?

以前、レコードレーベルで働いていたんですが、そのとき堀部君(当店店長)とクリスティナ・ゴランドというスイスの写真家についてやりとりする機会があったんです。後のち、IVY*1からも恵文社にSWISH!として改めて紹介があって、当初はTシャツを卸していたのですが、いつの間にかそれがニットになって…今日にいたります。

―そういえばニットだけではなく布製品もありますよね。SWISH!のロゴが入ったTシャツ、大好きです。SWISH!を立ち上げたきっかけは?

友人がIVYをオープンして、私もD.I.Y.精神で作ったバッジとかプリントTシャツを持ち込んだりしたので、そのとき名前がいるんだってことになりました。

―ところで今更なんですが“SWISH!”って、どういう意味なんですか?

SWISH!って、擬音語で “シュッ!” とか “ヒュッ!”っていう音のことなんです。バスケットのゴールにボールが入る音とか。スヌーピーが、ライナスの毛布を奪うシーンがピーナツに出てきますが、そのコマにSWISH!って描いてあって、それがすごく気にいっていたので。あとから、イギリス英語で“すごくお洒落な” って意味もあると教えられて、ちょっと得した気分でした。

―なるほど。スヌーピーお好きそうなの、作品からもなんとなく伝わります。生活館で取り扱いさせてもらうようになってもう5年以上経ちましたが、ミトンやネックウォーマーの基本形は変わらないのに飽きないんですよね。いろいろ新商品を作ってもらうより、やっぱり今年の指なしミトン&ネックウォーマーを見たい感じ。昔から好きなものや作るもののテイストって変わりませんか?

結局、変わらないです。作りはじめの頃の作品を写真でみると、今より色がすごいヴィヴィッドだったり、形もアンバランスだったりしてました。作るものは変わらないですけど、そういう所は当然ですが、変化してますね。いつまでも似たようなのやってるなと思うこともありますけど、使うものを作っているし、使い心地とか出来映えのほうで進化したい気持ちのほうが強いです。全部一度に進化したいところなんですけど、急にずばっと変化したり、新しいことを無理に考えると、私の場合あまりロクなことがないんです。

―研ぎ澄まされていってるんですね。図案や色はどうやって決めるんですか?毎年、いまこの柄が来てるな〜っていうのは感じるのですが。今年はさんかく、とか…。

塗り絵みたいにやっています。ただ、頭で考えた組み合わせの色を編んでいっても、よくなかったり、それまで編んでた部分も調子が狂ってしまうということがよくあります。編んだ時の相性をみながら、次の色を探していきます。組み合わせがいいなと思うと色合わせをデータでとっておいて、また別ので使おうとするんですけど、全体のバランスの都合で可愛さがずれてしまったりして、あまり意味がないんです。さんかくは収まりがよくて、まるやしかくに無いかっこよさがあるので、今年は特に繰り返しよく使ってます。来年もやりかねません。記号みたいなものは、もともと好きです。きちんとやることには必ず学ぶところがあると思うので、スケッチノートみたいなものに、イメージをデザインしてから作る、というやり方が憧れなんですけど〜。つい、編んでみた方が早い、と結局は即興みたいにやってしまうんです。今度、メリヤス地を大きめに編んで、それをスケッチノート代わりに柄を考えてみようと思っているんですけど。

AASINSILTA
(『AASINSILTA』/Oiva Toikka)

―ありがとうございました。座右の書を1冊教えて下さい。

イッタラのガラスの小鳥のデザイナーで知られるオイヴァ・トイッカの描いた絵本『AASINSILTA』です。どのページもカラフルだったり、モノトーンだったり、デザインで埋め尽くされていたり。手描きのタッチで、それはもういろんなものが溢れすぎていて、胸がいっぱいになるんです。チリチリとインスピレーションが逆立つような力があって、また開いてしまいます。

お会いする度にお酒の席が盛り上がり、作品についてきちんとお話を伺うのは今回がはじめて。一目みて気に入り、今やすっかり定番商品となったミトン。毎年SWISH!らしい色やデザインが新鮮で、新作が届くのをスタッフ一同待ちわびています。

WEBサイト:http://www.shopswish.com/

*1 遠藤倫子と渡辺菜々によって2000年オープンした代官山のセレクトショップ。カヒミ・カリイ、カジヒデキ、嶺川貴子らミュージシャンとのコラボレートなどカルチャーとリンクした活動が注目を集めた。現在はウェブショップ(http://www.naname.com/top/shop.html)のみの営業。