恵文社一乗寺店ウェブサイト
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「いちじょうじ人間山脈」
題字:関美穂子
2011年5月3日取材 インタビュー・原稿:堀部篤史/撮影:稲盛有紀子
個性豊かな作家さん、アーティスト、取引先の皆さんと毎日のように関わりながら成り立っている当店。そんな人々を探れば自ずと店の輪郭までもが浮かび上がるのではないかということで、スタートしました連載「一乗寺人間山脈」。
今回は、『ロカの弁当』発売にあわせ、昨年に引き続きゴールデンウィーク中にお弁当を販売しに来てていただいた、ロカ店主の木村緑さん。お店の経営者であり、美味しくてバランスの良いレシピが好評の料理家である緑さんに、出版に至るエピソード、料理家としてのルーツをおうかがいしました。
―今日は朝から本当にお疲れさまでした。『ロカの定食』に引き続き、今回お弁当をテーマにした第2弾が出版されたわけですが、そもそもレシピ本を出版されるきっかけって?
『Lマガジン』さんにはご取材いただいたり、イベントで編集者さんと顔をあわせたり何度かお世話になってはいたんですが、書籍部から出版のオファーを戴いた際には、(出版にあたり)お金が掛かるんじゃないか*1とか、私にはまだ荷が重いんじゃないかとか、二の足を踏んでいたんです。たまたま同級生だった友人が編集者にいたり、担当していただいた編集者さんらの熱意もあってなんとかがんばってみました。お店を営業しながら大変じゃないの?なんて言われることもありましたけど、編集の皆さんが自分以上に動き回ってくださるので、負担に感じるよりもがんばろうという気持ちの方が強かったですね。
―本を出されてお店や身の回りで何か変化はありましたか?
最初の本が出版されてしばらくは、本当に大忙しでしたね。北は北海道から南は沖縄まで、大勢のお客様にわざわざお越し頂きました。最近はすっかり落ち着いてしまいましたが、やっぱり本の力を改めて思い知りました。今回のお弁当編のセールスポイントは、定食にくらべて彩り豊かというか、お弁当箱なんかのスタイリングも含めて視覚的に楽しい本が出来上がったと思います。
―前回の本はお店で出されていた定食を元にレシピが作成されていましたが、今回のお弁当はどこかで出されたりすることはないんでしょうか。
ケータリングやイベントに合わせたお料理をださせていただくことも多いんですが、そこでよく出しているお料理なんかもこの中に含まれていますね。手まり鮨なんかも、ケータリングをしながら生まれた定番メニューの一つです。蝶がトレードマークのお店にお願いされたときには、お寿司を一つひとつ並べて遠目で見たらちょうちょのカタチになるようにしたり。ご依頼いただくお客様も、華道の家元さんからお付き合いのある古本屋さん、落語会まで幅広いです*2。
―恒例の質問なのですが、座右の書、というか今のお仕事のルーツになったような本ってありますか?
う〜ん。料理自体実は二十歳くらいまでほとんどしたことがなかったんです。でも今思い返すと、調理できるママゴト用のおもちゃとか、ああいうのではよく遊んでました。料理という認識よりも食べものがどうやって出来上がるのかとか、そういうことに興味が合ったんでしょうね。この本も、小学校に上がるくらいの頃に買ってもらったいわゆる子ども向けのクッキング絵本なんですけど、子どもの頃はすごく熱心に読んでたみたいで、自分の好みだったり注意書きが小さい字でいっぱい書き込んであるんです。玉子がゆの「がゆ」の横に「おかゆのこと」って書いてあったり。レシピ集よりも食べものそのものに関心が強いんでしょうね。
―なるほど、ありがとうございました。またなにかイベントができるといいですね。楽しみにしています!
昨年に引き続き、今年もあっというまに完売してしまったお弁当。買いのがしてしまい悔しい想いをした方は、レシピ本を見ながらチャレンジしてみるのはいかがでしょうか。ちなみに今年のゴールデンウィークに当店となりのガレージで販売したお弁当は、『ロカの弁当』P42に掲載されている「甘くないフレンチトースト弁当」です。『ロカの弁当』はこちらからどうぞ。
*1 もちろんそんなことはございません。
*2 華道家片桐功敦と共に企画、提案する、ワークショップ「花と果実舎」を主水書房にて定期的に開催中。くわしくはこちら(http://hanatokajitsusha.blog135.fc2.com/)