第三十一回
小山内信介さん(SECOND ROYAL RECORDS)

2011年11月3日取材 インタビュー/原稿/写真:堀部篤史

個性豊かな作家さん、アーティスト、取引先の皆さんと毎日のように関わりながら成り立っている当店。そんな人々を探れば自ずと店の輪郭までもが浮かび上がるのではないかということで、スタートしました連載「一乗寺人間山脈」。今回は当店店長とは10年来の知人であり、京都発にして全国にその名を轟かせるレーベル「セカンドロイヤルレコーズ」のオーナー、小山内信介氏。レーベル発足9年目を迎え新たにオープンした「セカンドロイヤル・プロジェクトルーム」にお邪魔してお話を伺ってまいりました。

―ここはどういうスペースなの?

事務所としての機能ももちろんあるんだけど、レーベルのカタログやグッズを販売しながらちょっとドリンク類も出したりして、一般のお客さんが自由に出入りできるスペースにしたかったんです。前はマンションの一室に籠って仕事してたんだけど、人の出入りもないし、やっぱりこういう仕事なのでお客さんが気軽に来れる場所が必要だなと。普段はクラブイベントでしかあわないお客さんと気軽に話しもできるようになったし、ちょっとした企画なんかもできるようになって活動にも広がりが出てきました。

―今回のコンピレーション・アルバムの監修を依頼してくれた経緯は?

うちのレーベルは海外のインディー音楽に影響を受けた英語詩のバンドや、クラブよりのダンスミュージックが中心なんだけど、それだけだとある程度以上の広がりがなかなか難しいことに気づきだして。いままで長い間自分たちの好きなコアなものだけを出し続けてきたので、ファンの方々にはレーベルポリシーは理解してもらったと思うし、これからはもうちょっとリスナー層を広げたいなというのが狙いです。

―ウチの店でも一部扱いはあるんだけど、名前は知ってるなあ・・ってなかなか手に取るまでいかない人も多いもんね。

だからそういう人たちに向けて、京都発であることとか、音楽以外のつながりもアピールしたくて堀部くんにパッケージから選曲まで監修をお願いしたんです。パッケージも工夫してグッズっぽく仕上がったし、アルバムの感じもウチの音源をまた違った角度でまとめてもらった感じで新鮮な1枚になったと思います。

―のりたけさん*1のイラストがすごいいいね。お願いして正解でした。

今回のリリースに合わせて、のりたけさんからは原画をお借りしているので期間限定で展示も行います。これからどんどんこういう企画も増やしていきますので、恵文社のサイトをご覧のお客様もぜひお気軽にお越し下さい。


―最後に座右の書を1冊。

これは音楽関係の仕事をしている人たちへのインタビュー集なんですが、いわゆるミュージシャンとかバンドマンだけではなくて、裏方を担当する僕のようなレーベルオーナーとか、レコードショップの人やイベンターなんかを中心に取り上げています。かなり赤裸々に金銭関係のことまで綴られていて、身につまされる所が結構ありました。こういう仕事って手本が余りないし、自分も手探りでやって来たんだけど、これを読むと他所も同じような感じでやって来たんだなというのがわかって勇気づけられたりもして。

―「働き方本」として読めば、音楽関係以外の読者でも充分に楽しめるクオリティだし。今日はどうもありがとう、今度はビール飲み*2にきます。

Tシャツ作ったり、DJしたり、ビール出したり、酔っぱらったり。レコードをリリースするだけじゃない、レーベルの仕事ってやっぱり不思議。新たに誕生したこのスペースが、さらなるカオス空間に成長することを期待しています。今回企画から関わったレーベルコンピレーションアルバム"Take a bite at SECOND ROYAL"は、音楽と食にまつわるちょっとしたコラム*3を6本収録したブックレットも楽しめる凝った仕上がりの1枚になりました。さらなる広がりを求めるセカンドロイヤルの今後の活動に要注目です。

SECONDROYAL SHOP & PROJECT ROOM
〒604-8075( 京都市中京区麩屋町通三条下ル( 白壁町442 FSSビル3F
+81(0)75-212-1915

*1頭強を拠点に活動するイラストレーター/アーティスト。紙媒体や広告などの仕事を手がけるかたわら、自らZINEやグッズを精力的に発行する。(http://www.noritake.org/index.html

*2SECONDROYAL SHOP & PROJECT ROOMではブルックリンラガーを始めとしたビールやソフトドリンクも飲んで一服できます。

*3向田邦子からモーリス・センダック、ジョン・ケージにキューピーの広告までを綴ったショートコラムとイラストが収録され小冊子としても独立してお楽しみいただけます。