わざわざ遠方からお越しいただくお客様のために、当店の帰りにふらりと寄ることの出来る周辺のお店をご紹介。カフェから洋服屋、定食屋にディープなスポットまで、一乗寺ロコ(地元民)しか知らない情報を取材形式でお届けいたします。

第十五回 「迷子」さん

お久しぶりに左京区らしい喫茶店をご紹介。先日まで開店しながらも休業中、「とりあえずは珈琲のみで再開しようかな…」という店主のお話を伺って参りました。

(INTERVIEW , TEXT, PHOTO BY 椹木知佳子)
2007/7/25


店主の山本耕平さん...ではなく、山本さんから買った雷蔵ブロマイド。


外観はペンションのような洋館。ツタが絡まる白枠の窓が素敵です。 2階は人気喫茶店「GOSPEL」


店内。「散らかってるんで全体は撮らないで下さい」とのこと。 この乱雑な感じもまた良い


レトロポスター、ポストカード、写真などなど。 いつも何かと古いものを整理している様子。


至るところに点在する間接照明。ステンドグラスやミルクガラス製 のランプシェードが多い。 程よい装飾でどれも趣味が良い。アクセサリーや帽子なども販売している。


入り口。右手階段を上がると人気喫茶店GOSPEL。


「ちゃんと選んで置けてない」と山本さん。どの本棚も良い感じ。

メニューありますか?確か以前に梅こぶ茶とりんとうとか食べたはずなんですが。

( 以下、「」内は迷子店主、山本さん )

「すいません。今は珈琲ならできます。基本的に珈琲程度にしようと思ってます。」

− そうなんですね。じゃあ珈琲下さい。珈琲はもともとお好きなんですか?

「いや、特にそういうわけではない。喫茶店にはよく行ってたけど 。」

− 生まれは京都の左京区なんですよね。行きつけの喫茶店とかあったんですか?

「中学生くらいの時から喫茶店に行ってましたね。昔は熊野神社あたりのジャズ喫茶。今のブルーパロット(*1)が出来る前にあった「サンタクロース」とか「YAMATOYA」(*2)っていう喫茶店とか。1970年代の初めくらいかな。」

− へえー。その頃はジャズ喫茶とか多かったんでしょうね。じゃあ元々喫茶店が好きで始められたんですか?

「喫茶店に関してはひょんなことからですね...」

− ひょんな事からというのは?上のGOSPEL(*3)さんが大家さんと聞きましたが。

「話せば長いことながら、お二階にちょくちょくお邪魔していた事から、ここを貸していただく事になったんですよ。古道具屋さんの真似事がしたかったのでやらしていただく事になりました。でも接客は苦手なんですよ...」

− 何が一番したいんですか?

「許されるものならあんまり何もしたくないんですよ...」

− 私だってしたくないですよ!!!

「基本的にはあんまり何もしたくないです。気の向くままに本を読んだり、音楽を聴いたり...平安時代のバカ公家まがいの生活に憧れます。してみたいものですね。」

− そりゃあその気持ちには共感しますけどね。私だって何もしたくないですが.。でもちゃんと生活できてるんだからいいですよねー。

「ちゃんとかどうかは分かりませんが、最低限度、生命の維持はかなってます。」

− ほんとかなあ。それいいんですか?

「世間のスタンダードには頓着しません。標準家庭プラスマイナスアルファくらいの所得さえあれば、とは思いますけど。それもなかなか。」

− 私が昔初めてここに来た時、2階(GOSPEL)に行かせようとしましたね。「上でも飲めますよ」とか言って...。「いえ、ここにします」とか言ってまんまと居座ったら、結構長話をして帰ったんですよね。あれは何だったんですか?入られると困るとか。

「そういう事はたまにありましたかねえ。たまたま忙しかったとか、あきらかにGOSPELさんと間違っておられるなって分かる時もあるし。そういう事、結構あったなぁー。」

− あの時は大量のポスターを整理されてました。

「ああ、そうですね、その時はそうだったかもしれへんね。だからかも。」

− あれから1年以上、そのポスターの整理に追われて、店にいながらも休業してたらしいじゃないですか。これらのポスターなどは一体どこから?アクセサリーとか古本とか、色々ありますよね。どっから持ってくるんですか?どういう繋がりがあって誰から仕入れするんですか?

「できれば私が教えて欲しいです。それこそ知り合いとか...色々ですね。ポスターは知人から預かったんです。整理して某所にて販売してました。」

− 高そうですね。

「中には高いのもあるけど、モノによりけりです。」

− 古本も置かれてますね。色んな本があるけど、映画関連の本も多い。以前来た時は、映画の本の話をし始めて結構長居したのでした。好きな評論家は?

「小林信彦、筒井康隆、色川武大の映画評やエッセイはよく読みました。この三者の好みの公約数?的な映画が私の好みと合いましたね。例えばマルクス・ブラザーズなんぞ。」

− プログラムピクチャーがお好きなんですよね。リアルタイムで見てたとか?

「まさか。さすがに年齢的に劇場では観てません。好きである事にウソ偽りは無いけれど、正直なところ、当時の邦画は劇場に足を運んでお金を払ってまで観るほどのものでもないってニュアンスかなあ。」

− かなり観てはりますよね。

「最近はご無沙汰してます。どうせそのうち映画も自動配信になるでしょう。」

− 言い切りますね。そういえばその話は前にも聞きました。山本さんが若い人にもおすすめする邦画ってどんなのですか?

「新東宝*4のエログロ路線*5なんぞいかがでしょう。月並みながら石井輝男とか。そのあたりはどうなの?」

− 「異常性愛路線」(*6)、「ラインシリーズ」(*7)は観てます。三原葉子が好きで。新東宝なら中川信夫あたりは好きですけど。映像としても面白い。天知茂とか沼田曜一が好きだし。

「天知茂、いいですね。天知茂は土曜ワイド劇場の明智小五郎のシリーズ*8もある意味面白かった。私はあんまり監督で映画を観る方じゃないですけどね。俳優やったら宍戸錠とか成田三樹夫が好きです。」

− 映画の話ばっかり聞いてしまいましたね。

「そうでしたかね。それじゃ今から音楽の話なんぞいたしましょうか。」

つい最近まで休業中だったため、あまり整理されていない店内を無理にお願いして撮影させていただきました。皆さまが入れる頃にはもう少し片付いている事でしょう。私は普段はお店の方とあまり会話しない方なのですが、最初にお店にお邪魔した時からざっくばらんにお話をさせていただきました。「あまり接客は得意でない」と言いながらも、お話し始めると案外饒舌な山本さん。肝心のお店についての話より、世間話や映画についてのお話が多くなってしまい、取材そっちのけで数時間を過ごしてしまいました。今まで気にはなっていたけれど、小さな扉を開ける勇気の無かった方には特に行っていただきたいと思います。今まで迷子は喫茶店だと思っていたけれど、どうやらそれがメインというわけではないらしい、ということが今回の取材で判明いたしました。

*1 丸太町東大路交差点を東に入ったところにあるアンティーク家具のお店。南側に位置する。 http://blueparrot.jp/
*2 丸太町東大路あたりにあったジャズ喫茶。70〜80年代の京都はジャズ喫茶全盛の時代があった。
*3 迷子の2階。ツタが絡まる白壁の洋館です。こだわりの珈琲のほかに美味しい軽食も食べられる。水・木Midi-Apres-midのケーキが食べられる。京都市左京区浄土寺上南田町36 TEL075-751-3980 営業時間12:00〜24:00 定休日:火曜日(祝日営業)
*4 1947年に創立。東宝から分裂した形で誕生した映画製作・配給会社。
*5 1950年代後半から興行主、大蔵貢の提案によりスタート。肉感派女優らの作品群。三原葉子、前田通子、万里昌代らが主演を務めた。「女真珠王の復讐」とか「憲兵とバラバラ死美人」とか、タイトルからしてヘンなものが多い。
*6 1968年監督石井輝男が東映で監督し、ヒットしたシリーズ。「徳川女系図」など。
*7 石井輝男が1950年代後半〜60年代初頭にかけて制作したシリーズ。タイトルの後ろに「〜〜地帯(ライン)」が付く。ヒロインは三原葉子。
*8 朝日テレビ系列のテレビ番組。新東宝の怪優、天知茂が明智小五郎役。妙な具合にピッタリと合っていて、ファンが多かったようだ。


「迷子」で購入したもの。
古書『七人の予言者』(黒沼健)、雷蔵ブロマイド、だるまの置物。すべて合わせて500円で。

 

         

 

■おすすめの一品

珈琲 500円

※現在のメニューは珈琲のみ

   
 

 
 

迷子

〒606-8405
京都市左京区浄土寺上南田町36 GOSPEL 1F
TEL 075-771-4434

営業時間 15時〜21時の予定
定休日 火曜日

 

Google mapで詳しい地図をご確認いただけます

 


 

 

 

 
 

 

 

   
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